羽黒青糠目石、その最大の魅力は、他に類を見ないきめの細かさと、青みのかかった深みのある色合いが醸し出す独特の重厚感にあります。また他の御影石と異なり、採掘量自体が、極めて少ないということもあり花崗岩の最高級品と称されます。さらに、山の丁場の一角では、ごく稀に、「牡丹石」と「浮常陸石」が採掘されることがあります。「牡丹石」や「浮常陸石」は、その希少価値から幻とさえいわれています。これらの特徴としては、通常の青糠目石の色目に黒い牡丹のような模様が浮かんでいるところにあります。この黒い牡丹のような模様が点在しているのが、「牡丹石」であり、「浮常陸石」においては、黒い牡丹の模様がかすめるぐらいに同化しています。少し距離を離れて眺めてみると、青みのかかった色合いに加え、ふわふわと浮いているようにも見えてきます。
羽黒青糠目石が採掘される羽黒地区は、栃木県・茨城県両県境を南下する阿武隈山脈の支脈が名山「筑波山」・「加波山」へのびる山脈の中間にあります。南に真壁石、東に稲田石が産出される日本最大の花崗岩産出地の中間地の地表約30mほどの部分に極僅かだけ糠目石は産出されます。これ以深は、稲田石の地層になります。
羽黒青糠目石が採掘される茨城県桜川市(旧岩瀬地区)は大貫亀吉、瀬尾藤吾、飯島善松真家明により明治35年頃本格的に花崗岩採掘が開始されました。明治37年4月に花崗岩の輸送のため貨物取扱駅として羽黒駅が誕生したことにより盛期を向かえました。また、花崗岩の最高級品と称される青糠目石もこのころより採掘され、石材最盛期当時の羽黒駅周辺は、石の問屋街のようであり、「ノミの音で夜が明け、ノミの音で日が暮れる」といわれ、活気あふれるものであったといわれています。
|